物忘れ、認知症について
「認知症かどうか心配で・・・」といって受診される患者さんは多くなりました。また、頭のCTやMRIを撮影したときに、ご高齢の患者さんからは大抵、「私の脳は認知症になっていませんか」と質問されます。高齢化が進むにつれ、心も体もいつまでも自立して元気でいたい、呆けて家族に迷惑をかけたくない、という思いを強くしている方が増えているのは間違いありません。
1.認知症の原因は少しずつ解明されてきています。
認知症の原因はたくさんあります。治せる認知症を診断する、認知症を早期に診断し、治療を開始する事が大事です。
治せる認知症として
慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍の一部、髄膜炎、脳膿瘍などの感染症、内分泌機能異常、糖尿病性昏睡、血清電解質異常、ビタミン欠乏症、慢性アルコール中毒、うつ病性認知症など
があげられます。これらを見落とさないように診察、検査を行います。
2.認知症の前段階である軽度認知機能障害(MCI)を早期に発見することが大切です。
簡単な知能検査を行い、記憶力、注意力、遂行能力などを調べます。MRIで早期の変化が認められることもあります。また、リスクファクターのチェックも行います。脳血管性認知症の多くは脳血流障害(脳動脈硬化)を伴っていますので、その原因である高血圧、高脂血症、糖尿病がないかチェックし対策を立てます。現時点での動脈硬化の指標として頚動脈超音波検査でIMT(内膜中膜複合体厚)測定を行います。
3.日常生活で大事なことは、脳を使う生活をすることです。
散歩、カラオケ、スポーツ(特に有酸素運動)は脳を活性化する効果があります。また、物事を計画し、実行する作業(たとえば料理をしたり、旅行に行ったり、芸術的活動をする)も前頭葉を活性化するといわれています。
4.治せる認知症といっても完全に回復しない場合もあります。
なぜなら、原因が一つとは限らないことと、年齢相応の衰えがあるからです。
治せない認知症、言い換えれば徐々に進行していく認知症をどうやって治療、対処していくかは、社会のあり方をも考えなければならない大きな問題です。進行をゆっくりにするお薬は開発され、臨床で使われています。しかし、ある程度進行し、徘徊、暴力といった周辺症状が強い場合は精神科的な治療が主体になってきますので、認知症専門病院と連携して治療していきます。主治医意見書の作成などで介護サービスの導入、利用に関わってまいります。