脳卒中予防を主とした生活習慣病の管理
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の病態を考えてみましょう。
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脳梗塞は脳動脈硬化による場合と、不整脈による場合があります。
脳動脈硬化よって脳の血流障害が生じ、限界を超えたときに脳梗塞になります。脳動脈硬化の危険因子として高血圧、脂質異常症(高脂血症)、耐糖能異常(糖尿病)、喫煙、飲酒があげられます。
不整脈としては心房細動が大切です。 -
脳出血は多くの場合、高血圧が原因です。
直径0.1~0.3mmくらいの細い動脈の微小動脈瘤が破綻して起きる場合や、脳の表面近く(皮質下)の動脈のアミロイド血管症による血管の脆弱性、もやもや病や脳動静脈奇形が原因のことがあります。そのほか、飲酒も危険因子と考えられています。 -
くも膜下出血は脳動脈にできた動脈瘤の破裂によることがほとんどです。
動脈瘤の発生機序としては遺伝的素因、血管壁の中膜欠損、動脈硬化、高血圧、喫煙が考えられています。両親、兄弟でくも膜下出血の発生が多いケースはよく経験します。動脈瘤破裂の危険因子としては高血圧、喫煙、過度の飲酒(1週間で150g以上の飲酒:ビール中瓶7本以上、日本酒7合以上)があげられます。
以上から、脳卒中予防のためには、高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、脂質異常症(高脂血症)の管理を行い、禁煙、飲酒の制限が重要です。
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血圧管理の目標:140/80以下。後期高齢者は150/90以下
耐糖能異常(境界型糖尿病を含む)では、食事内容を調べ、規則正しい食事、間食の中止、カロリー制限(職業に応じて、1日の摂取カロリーの目標を立てます)を行います。糖尿病のお薬が必要になる場合もあります。糖尿病性合併症(腎障害、網膜症、末梢神経障害)の早期発見に努めます。 - 脂質異常症に対しては、食事の内容についてアドバイスいたします。最近の研究では食事における脂肪酸のうちω3(オメガ3)脂肪酸の比率が高いほど脂質異常症の改善、脳卒中予防効果があるといわれています。ω脂肪酸とはα―リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の3つです。これらはクルミ、鰯や鯖、鰺、マグロ、サケ、に多く含まれていますので、このような食材の割合を増やした方がよいでしょう。なかなかコレステロール値が下がらない場合は必要に応じてコレステロールを下げるお薬を使います。脳卒中や虚血性心疾患の既往がない場合はLDLコレステロール160以下、脳卒中の既往がある場合は120以下が目標です。中性脂肪は150以下が目標です。(これらの目標値はガイドラインの改定で変更になることがあります)
- 喫煙はやめましょう。
- 飲酒量は少量であればコレステロールを下げて健康によいという考え方もあります。過度でなければよいというのが一般的です。血液検査でγ-GTPが正常化するのを目安と考えています。
- 日常生活では適度な運動をおすすめします。有酸素運動は内臓脂肪を消費しLDLコレステロールを下げる効果があります。また全身の血行をよくしますので、体重減少、血圧の正常化が期待できます。運動に関するアドバイスも行います。